なぜ、今の親世代から突然食の乱れが起きたのか。祖母世代の食の考え方や習慣はなぜ正しく伝承されなかったのか。
著者の前著「変わる家族 変わる食卓」 での調査によって新たに浮上したこれらの疑問を、祖母世代の食生活や子育て、社会の変化と意識変革の聞き取り調査に基づいて解明しようという試みである。
食卓事情というのは文字通り「日常茶飯事」であるがために、正式な記録には残りにくいものであるのだが、本調査は80年代に石毛直道氏らが手がけた「家庭の食事に関するライフ・ヒストリー調査」によって記録された、平成18年現在80才以上の方の昔の食生活と現代とを埋める重要なデータである。
石毛氏らの調査については『食卓文明論 - チャブ台はどこに消えた』にて触れられているので参照されたい。
伝えない・教えない母親の誕生や「経験」より「情報」を重視する価値観、子供に「してあげる」親子関係は、敗戦による大転換という祖母世代の特異な生育歴と、高度成長期での育児という環境の中ですでに生まれ培われたものであり、それを受け継いだ現代家族における食の崩壊は起こるべくして起こったのであるという結論には納得せざるをえない。
本書では、食の問題とその発生した理由が明確に述べられ、単にイメージやノスタルジーで、昔は・・・と叫ぶことで食の乱れが正せるものでないのがよく分かるが、どうすればよいかという解決法は提示されない。それは各家庭が食に対する問題意識を持つことによって導き出すことだからだ。過去を知り、現在に照らし何がおかしいのか、変化したことは何か。家庭の食生活をどう改善するべきかを考えるために是非とも参考にしたい書籍である。また「変わる家族 変わる食卓」と併せて読むことで一層の理解が得られるのでこちらも強くおすすめしたい。
“現代家族”の誕生―幻想系家族論の死岩村 暢子
勁草書房 2005-06
おばあちゃん世代の意外な人生観
食の乱れは時代の必然であった
親子とは何かを考えたい人に
Review by shobosu
「変革」確かにそうだと思います。
祖母世代の人は「理想的な日本食」を目の当たりにして育ったにもかかわらず、「ハハキトク」「オカアサンヤスメ」といわれる「不健康」とされる現代食を積極的に取り入れていった変革者だったのですから。
彼女たちにとって昔の食生活はすでに自分の価値観とズレていて、その克服としての現代食へのあこがれだったことは本書でも読み取れるところでした。
今の親たちが何を克服しようとして、菓子やインスタントの食事を選ぶのかはそれぞれの事情があって、はっきりと分かりませんが、もしかするとそういう食事を「ちゃんとした」ものに矯正する教育よりも、彼女たちが克服しようとしている、何かモヤモヤしたもののを汲み取ってやる議論が先なんじゃないかな。なんて思います。 何かわかりませんけど。
私は、この本を読んでいないのですが、「乱れ」というのは見方によっては「変革」ということでもあると思うのです。
日本の「家族観」や「国家観」は19世紀ごろに固定されたままで、その後の環境変化と、まったくズレている。「乱れ」とみるひとは、その19世紀ごろに「もどす」ことを基準にしているように思えます。そこに「幻想」があると思います。
一方、「乱れ」ているといわれる食事は、そういうズレを現実的に克服しようとする、さまざまな試行錯誤から生まれているものが多く、その現実を、よく見て、よく考えて、発見していく議論が必要ではないかと思うのですが。
ま、これからも、よろしく〜
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