◆「おいしい」を求めるわれわれは本当に幸せなのだろうか?
私たちの感じるおいしさは次の四つの要素で成り立っているといいます。
1.生理的欲求に応えるおいしさ
2.食文化に合致するおいしさ
3.脳の報酬系を刺激するおいしさ
4.情報がリードするおいしさ。
そのうえで、現代人の感じるおいしさはいびつだと著者は指摘します。
それは「4.情報がリードするおいしさ」に対して特に敏感になっているからというのです。
たとえばこんなことではないでしょうか。
わたしたちは食の安全性を「安全らしいもの」という情報に依存して判断しがちです。賞味期限表示はその代表といえます。
賞味期限はたとえ少しくらい切れていても、品質上問題のない場合がほとんどです。そして食べたとしても特に変わったところは無いはずです。
しかし、賞味期限と言う情報がおいしさをリードしている状態においては、それが切れている食品はその人にとってはもう”おいしくない”のです。
人によっては、もったいない話ですが、期限切れならば中身も確認しないで捨ててしまうこともあるでしょう。
匂いや見た目、手触りを確かめたり味見をすることでおいしく食べられるかどうかわかる場合が少なくないにもかかわらず、その五感に頼らず、外部の情報にとらわれておいしさの判断を下しているのです。
ここに現代人のおいしさの構造のいびつさがあるのです。
太るらしい、やせるらしいという外部情報に盲目的に飛びついて偏食に陥ったり、特定の食品をむやみに避けたりするのも同様の現象といえます。
大事なのは、自分の体の状態を感じ取って適切な食生活を自分の腹と頭で考えることです。
別の現象としては、脳の快楽を求めて度を超した激辛を食べたりすることも五感とかけ離れたおいしさの感じ方です。
著者は最後にこのように述べています。
脳が情報の依存によって肥大し、身体の欲求を超えたり、あるいは無視した快感の欲求に走る。
生きることと無関係の欲求を追求し、動物としての人間に興味を持たなくなった人類に待つ未来は明るくない。
人間は脳で食べている
伏木 亨

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