非@食べ歩き

食の本〜感想・記録・書評みたいなこと。食のニュース批評・食文化の研究を通して食事力を鍛えてます
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『悪食コレクション―あるいは“食”としての文化人類学』
村上 紀史郎
4826101554

 イモムシを丸かぶりする人や、イヌの丸焼きが並ぶ市場の風景を見るのは、気持ちのよいことではありません。
イモムシや、焼かれたイヌなど、見るのも嫌な食べ物はゲテモノと呼ばれ、それを食べることを悪食(あくじき)と言います。

そんな悪食の世界を調べ、食べて、書かれたものを、硬軟とりまぜて、まとめた一冊。
各種の虫類の食べ方や、日本では決して食卓に上らないような哺乳動物の料理など、その手に弱い人には読むことに忍耐を要するでしょう。

 さて、悪食というのは、今いったように、ようするに気持ち悪い物を、食べることです。
それゆえに悪食は、それを見る人に、野蛮さや、倫理的に劣った印象を与え、気持ちを不快にし、軽蔑の対象とされてしまいがちです。

テレビで時々みかける、世界の珍品料理の番組では、日本に比べて経済、科学的文明的には後進な地域に出かけて、ギャーギャーと悪食をさせられる様子が映されます。当然、明言はしませんが、暗に、未開人を嘲笑する風の意図が私には感じられるのですが、どうだろう。軽薄な文明イジリはやめて頂きたいものだが・・。

話がそれましたが、では、はたして、悪食は当然、軽蔑されるべき野蛮な行為なのでしょうか。
子猫を殺したという作家の発言が話題になっていますが、仮にこれを食べるために殺したと言ったとしたら、世間の反応は変わったでしょうか。
食べるためなら、いちいち公言する必要もないのですが。

悪食に感じる不快さの程度は、日本人同士でも、人により様々です。
まして外国であるとか、別の文化圏に行けば、全く正反対に受け取られることもあるでしょう。中国広東省では老猫を食べるそうです。
普仏戦争時のパリでは、ネコ・イヌはもちろん、動物園の獣まで肉屋に並んだそうです。戦時という特殊条件下とはいえ、悪食と、そうでない物とを分ける気持ちの境界は実にあいまいです。

虫や、イヌ肉が日本人にとってゲテモノだとしても、それを好んで食べる文化があります。逆に、スルメや塩辛は多くのヨーロッパ人にとってはゲテモノだそうです。つまり、悪食の基準は、あくまで相対的なものなのです。

この本を読んで、気持ち悪いと感じたとしても、それはあくまで一読者の主観でしかなく、客観的に文明の程度や、倫理観を判断できる材料とはなりません。立場が変われば、日本の大衆食文化も、相当に悪食度は高く見られることでしょう。
その意味で、食べ物そのものは、文明の程度を示す尺度には全くならないし、何を食べるかで、その人を軽蔑することはできないでしょう。

むしろ、輸入してまで食べ物を捨てている日本人の食習慣や、異文化の食を笑いものにする発想を恥じない態度の方が、世界から軽蔑されかねないのではないでしょうか。

食べ物に文化的優劣を格付けし、我が貧乏生活を嘆くケチな気持ちは捨てよう。
身の丈にあった毎日の食事が、どうすれば人生を豊かにできるかを探ろう。
と、ブログのテーマを再確認したに過ぎませんが、まあ、ゲテモノにも食を考えるきっかけはあるということです。

『悪食コレクション―あるいは“食”としての文化人類学』
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